立形マシニングセンタ(メーカー特徴編)をまなぶ
〜前回までの基本編・構造編のおさらい〜
それでは、本題の立形マシニングセンタのメーカー別の特徴編に入ります。
立形マシニングセンタの導入にあたって、こだわりを持った機種選定ができる
「実はこんなメーカーもあるの?」の気付きを得られる
下記の機械メーカーは日本工作機械工業会に加入している日本の工作機械メーカーです。
OEMで機械を仕入れてメーカーラベルを張り替えるだけというメーカーは基本的に除かれています。台湾や韓国のコスパ高いマシニングのOEM機械を部品ユニットも含めてアフターメンテナンスしてくれている会社ならいいんですけど、機械修理はオリジナルのメーカーに任せっぱなしというところが多いですからね。
一度にすべて記載すると長くなってしまったので、前編/後編で分けます。前編は立形マシニングセンタの導入選定において、絶対外せないTOP10メーカーです。後編はTOP10に入れられなかったですけど、それぞれ特徴ある機械を生産しているメーカーばかりなので、セットでみていってください。
私が勝手にTOP10していますが、ランキングの基準としては、『一般部品加工屋さんにおけるオススメ度合い』です。月数万個程度の量産の加工ライン設計といった基準でしたらガラッと変わります。
ホームページなどには記載していない業界人だけが知る”生の情報”を記載しているので、ぜひ立形マシニングセンタ導入の参考にしてください。
オークマ 株式会社
工作機械メーカーの御三家です。
”機電一体”という他社にない圧倒的な強みがあります。CNC装置もほとんどのラインナップでオリジナルCNC装置の『OSP』を採用しています。だいたいの日本の工作機械メーカーは三菱電機/FANUCからCNC装置を購入して、画面の表示方法を自社でアレンジしています。
CNC装置の特徴以外にも、安定した加工精度を出すためのアプリケーションに富んでいます。例えば、加工びびりを検知して自動で送り速度調整をする”加工ナビ”や、熱変位補正機能の”サーモフレンドリーコンセプト”です。他社でも熱検知センサを付けて温度管理しているメーカーは多いですが、補正の正確さというかリアルタイム補正の完成度はオークマが抜きん出ている印象です。
立形ラインナップでは、C型コラム構造角形ガイド”MILLAC–Vシリーズ”と門型コラム構造リニヤガイド”MB-Vシリーズ”の両方のラインナップがあります。また、2019年発売の”MB-80V”という機種門型コラム構造の立形マシニングセンタは、立型マシニングセンタと5面門型マシニングセンタの中間ワークの市場を狙った機種展開です。
ちなみに、MB-Vシリーズの廉価機種である”GENOS-Vシリーズ”という機種があります。GENOS-Vシリーズは台湾の子会社である『大同大隈股份有限公司』にて生産していることから、MB-Vに比較して安価な価格設定です。仕様内容が合えばコスパの良い機械です。
また、総合工作機械メーカーとしてマシニングセンタ/5軸制御マシニングセンタ/5面加工機/旋盤/ターニングセンタ/金属積層造形機まで幅広いラインナップで、機械加工全般に対して提供できるソリューションがあるのは、とてもメリットがあります。
ヤマザキマザック 株式会社
工作機械メーカーの御三家でありながら、非上場の一族経営らしいユニークな会社です。
CNC装置『MAZATOROL(マザトロール)』の総合的なユーザーインターフェイスの高さは、マシニングメーカーで一番だと感じます。「機械加工に詳しくないオペレータさんでも使いこなせる」という評判は確かでした。
立型ラインナップはリニヤガイド機のみです。マザックの立形マシニングセンタのラインナップの特徴はサイズ展開が幅広いことです。特に、2,000~3,000mmの長尺細物ワークになると事実上は独壇場になる”VTC-530”・”MTVシリーズ”・”SVCシリーズ”といった特徴ある機種展開もしています。
また、総合工作機械メーカーとしてマシニングセンタ/5軸制御マシニングセンタ/5面加工機/旋盤/ターニングセンタ/金属積層造形機/レーザー加工機まで幅広いラインナップで、機械加工全般に対して提供できるソリューションがあるのは、とてもメリットがあります。
DMG森精機 株式会社
工作機械メーカーの御三家です。2016年にDMG社(ドイツ)と完全経営統合してからの会社方針転換から目が離せません!
製品ラインナップを合理化してマイナー機種は一気に廃盤にしたり、販売方針もユーザー直接取引を拡大したり、激動の会社方針転換が行われています。業界の慣例慣習を変革するには、業界リーダーのメーカーがこれだけドラスティックに動いた方がいいという一面もあるんでしょうね。
立形ラインナップではリニアガイド”CMX-Vシリーズ”と角形ガイド”NVXシリーズ”/”NVDシリーズ”のC型コラム構造の機種と、 リニアガイド の門型コラム構造 ”DMC-Vシリーズ”があります。サイズ展開は市場規模の大きい中型サイズのみラインナップしています。
また、総合工作機械メーカーとしてマシニングセンタ/5軸制御マシニングセンタ/旋盤/ターニングセンタ/超音波加工機/金属積層造形機まで幅広いラインナップで、機械加工全般に対して提供できるソリューションがあるのは、とてもメリットがあります。
ロボット自動化システムまで請け負ってユーザーの機械工程における自動化サポートを積極的にしています。DMG森精機社内の自動化チーム以外にも、自動化ユニットのメーカーやロボットSIとの連携が幅広くされているところが頼もしいですね。
株式会社 牧野フライス製作所
金型屋さんからは圧倒的なブランド力があり、近年は部品加工にも注力したラインナップ展開です。
金型屋さんからの人気の理由としては、金型製作のメイン設備となる型彫放電加工機やワイヤー放電加工機もラインナップしており、トータルで金型屋さんはトータルでソリューション提案を受けられるところもあるでしょう。
立形ラインナップの”Vシリーズ”は一般部品加工をターゲットにしており、金型加工向け製品で培ってきたノウハウが一般加工向けに反映された機種です。
マシニングセンタの付加オプションの研究開発については競合他社から一歩抜きん出た開発をしている印象です。これから注目なのが、日の出水道機器・田島軽金属と共同開発の高剛性アルミ鋳造合金『ATHIUM (アシウム)』です。一般的なねずみ鋳鉄と比較して60%軽量化されたことでイナーシャ(慣性)の影響が50%削減されるそうです。近い将来的に、超加速高精度のユニークなマシニングセンタが開発されることに期待です。
キタムラ機械 株式会社
マシングセンタ専業メーカーです。
中型~大型サイズ、重切削向け~高精度高速マシニングまでの幅広いラインナップしており、マシニング選定するにはかかせないメーカーです。
最近のトレンドである”CAM自動生成機能”についてもいち早く取り組んでいました。
機械の加工精度に自信がある表れとして、機械の繰り返し精度の表記が”全軸フルストローク 繰り返し精度 ~~mm”としているところだと思います。ほとんどのメーカーはJIS規格に則った一定ストロークでの繰り返し精度を表記していますが、実加工において気になるフルストロークでの繰り返し精度を表記しているところが、自信の表れなんでしょうね。
OKK 株式会社
マシングセンタ専業メーカーです。
”高剛性・重切削”という切り口を徹底した製品ラインナップをしています。フラッグシップモデルの”VM-Rシリーズ”ではボールネジの太さや鋳物構造の重量感は、他社マシニングの1サイズ大きい機種のものを使っていそうなくらいゴツい機械設計がされています。
長尺マシニングやグライディングセンタといった特定市場に向けたラインナップもしているので、マシニング選定にはかかせないメーカーです。
三井精機工業 株式会社
ジェイテクトのグループの高精度向けマシニングメーカーです。
角形ガイドの重切削からリニヤドライブの微細加工機、またはジグボーラーまで全て高精度に特化したラインナップ展開です。「安田工業は高価すぎるから、せめて三井精機にするか!」という高級志向のユーザーに一定の評判があります。
機械の加工精度に自信がある表れとして、機械の繰り返し精度の表記が”全軸フルストローク 繰り返し精度 ~~mm”としているところだと思います。ほとんどのメーカーはJIS規格に則った一定ストロークでの繰り返し精度を表記していますが、実加工において気になるフルストロークでの繰り返し精度を表記しているところが、自信の表れなんでしょうね。
安田工業 株式会社
超々高級機メーカーで、圧倒的な信頼感で支持されています。
1台のマシニングセンタを作る圧倒的なこだわりには、ただただ唖然です。安田工業を表わすキーワードは”キサゲ加工”・”主軸を熱変位させない構造”です。
地域で一番の高精度マシニング加工屋を目指すのでしたら、大きな味方になるマシニングメーカーだと思います。
ファナック 株式会社
#30の小型マシニングセンタのみ。
CNC装置の圧倒的シェアが大きな要因となって、小型マシニング市場では高いシェア率があります。
立型ラインナップは、”ROBODRILLシリーズ”と”ROBODRILL ADVシリーズ”の2機種展開。ADVシリーズは、Z軸ストロークが400mmにアップしたり工具交換のT to Tタイムを短くしたり、もろもろの機構ユニットを上位互換させた高性能タイプです。ちなみにADVという名称は”アドバンス”の省略です。
自社生産システムの高効率化が徹底されているので、低価格で高い完成度のマシニングを生産しています。自社の生産システムの高効率化をしている反面、組み立て工数がかかる周辺機器のオプション展開は限定されていることが多いです。具体的に「チップコンベヤ」といった仕様展開になると、FANUC社のみでは対応できないので、トータルで提案できる商社への相談がスムーズな導入の近道です。
ブラザー工業 株式会社
#30の小型マシニングセンタのみ。
競合になるFANUCとの差別化として、ロングテーブル仕様”W1000X1d”・高剛性仕様“F600X1”・オートパレットチェンジャ仕様“R450X2″/”R650X2”・5軸複合仕様“M200X3″/”M300X3”といった付加価値をつけたラインナップ展開をしています。
一昔前まではFANUC/Brotherともに、マシニングセンタではなくタッピングセンタと呼ばれていました。ですが、最近では加工能力向上によって、フライス加工用の”マシニングセンタ”として一般加工屋さんが導入することが増えています。そんな中でこの付加価値機能がある機種がBrother機導入の後押しになっています。
ちなみに、FANUC”ROBODRILL”と同等ラインナップは”Sシリーズ”です。
競合になるFANUC社が強みにしているCNC制御装置についても2020年にタッチパネル式の”CNC-D00”を発表してから、グラフィックインターフェイスが一新されて操作性も好評です。
TOP10メーカーは以上です!
メーカーによっては、リンク転載お断りが何社かあったので、まとめて全部リンクURLは無しにしています。画像やリンク貼りができない分、内容は魂込めて書きました!
冒頭でも”反感を避けるための保険”をかけている通り、後編記事にまとめているメーカーさんも特徴あるメーカーばかりです。笑
前編後編はセットです。続きもぜひみてください!
ではまた!
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